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胃癌についての一般情報を示し、続いて済生会広島病院外科における胃癌診療について紹介させていただきます。
(1) 胃癌について1-1) 解剖および胃の機能 1-2) 胃癌の疫学 1-3) 胃癌の発生および進展様式 1-4) 胃癌の進行度(胃癌取扱い規約に準じて記載) 1-5) 胃癌の進行度に応じた治療方針(胃癌治療のガイドライン) (2) 当科における胃癌診療について 2-1) 当院における胃癌治療の方針 2-2) 外科手術療法 2-3) 化学療法 2-4) 緩和医療 2-5) 当科における胃癌治療成績 ![]() (1)胃癌について 1-1) 解剖および胃の機能 胃癌の話をする前に、腹腔内・胃の解剖および胃の機能について説明いたします。 (a) 腹腔内の解剖 胃は、腹腔内においてみぞおちから左側に存在します。この周囲には、肝臓、胆嚢、膵臓、大腸、脾臓などの重要臓器が存在します。 (b) 胃の解剖 胃は、外側が厚い筋肉、内側は柔らかい粘膜という組織で覆われています。 ![]() (c) 胃の機能 胃は食べ物の貯蔵庫です。食道から入ってきた食物をしばらくの間(数時間から半日ほど)留め、胃液(胃酸)と撹拌(かくはん)し、半消化体となったものを適量ずつ十二指腸へ送り出します。栄養・ミネラル・水分などの吸収は小腸・大腸で行われます。また,ビタミンB12(このビタミンが不足すると貧血になる)の吸収に必要な内因子と呼ばれる物質を分泌しています。 1-2) 胃癌の疫学 2003年度の日本における胃癌の死者数は49,535人(男32,142人、女17,393人)で、男性では肺癌に次いで第2位、女性では大腸癌に次いで第2位でした(厚生労働省 人口動態統計より)。かつて日本では男女とも胃癌が第1位でしたが、胃癌検診あるいは胃内視鏡などの普及もあって死者数は年々減少しています。 胃癌は、胃粘膜の細胞から発生します。慢性胃炎などの後、胃粘膜は腸の粘膜に類似した腸上皮化生と呼ばれる癌化しやすい粘膜に置き換わります。慢性胃炎をおこす要因は胃癌の原因と考えられています。 塩分の多い食生活は,胃癌発症の危険因子と考えられています。また、たばこが胃癌を増やすことも明らかになっています。逆に、ビタミンCやカロチノイド類を多く含む生野菜や果物を多く食べる方に胃癌が少ないことがわかってきました。最近、ヘリコバクター・ピロリと呼ばれる細菌感染が、慢性萎縮胃炎、難治性胃潰瘍および胃癌の原因になっていることがわかってきました。この菌は50歳以上の日本人の80%が保菌しており、除菌(抗生物質を1週間服用)が胃癌発生の予防につながることが報告されています。また、遺伝子の傷を自力で修復する能力の劣った家系があり、その家系では胃癌や大腸癌が多数発生する場合があります。親兄弟、親の兄弟などに胃癌が多い家系は高危険群といえるでしょう。 1-3) 胃癌の発生および進展様式 (a) 胃癌の発生および胃壁内進展 (T因子)
実際の胃癌は下図のように見えます。これは、胃を開いて、胃粘膜面を見ている図です。破線で囲った部分が胃癌の病巣部です。
(b) 胃癌の進展様式
1-4) 胃癌の進行度(胃癌取扱い規約に準じて記載)
1-5) 胃癌の進行度に応じた治療方針(胃癌治療ガイドライン2004年,第2版)
胃癌治療ガイドラインでは、表に示すように胃癌の進行度に応じて細かく推奨される治療が決められています。このガイドラインの概略は下記の通りとなります。尚、この胃癌治療ガイドラインは情報公開されており、インターネット上で簡単に閲覧することが可能となっております。 (a) 癌を残すことなく、切除すること(根治術)が可能と判断できれば、胃切除を施行します。
(2)当科における胃癌診療について 2-1) 当院における胃癌治療の方針 日常診療として行っている胃癌治療の概略を以下に提示します。 治療の主体は、内視鏡的切除(内科にて施行)、各種手術療法(外科にて施行)、および化学療法となります。基本的には胃癌治療のガイドラインに沿って病期の進行度に応じて治療方針を決定してゆきます。 実際には、胃癌の進行度のみならず、治療を受けられる患者様の年齢および全身状態(心臓・肺臓・肝臓・腎臓・血液などの機能状態)を考慮し、治療対効果が最良となるように個々の症例で詳細な検討を行い、治療方針を決定します。 診断および治療に関する具体的な内容の説明は、担当医より患者様とその御家族になされ、最終的に同意が得られた治療法を行ってゆきます(インフォームドコンセント)。 (a) 当院での胃癌治療の内容
![]() 2-2) 外科手術療法 (a) 幽門側胃切除術 ![]() (b)胃全摘術 ![]() (c) 噴門側胃切除術 ![]() (d) 胃の手術に伴う合併症
2-3) 化学療法 抗癌剤は、癌細胞に対して細胞毒性を発揮することで癌細胞の増殖を抑制し、腫瘍に対する縮小効果を発揮します。進行・再発胃癌は、治療をしなければ、患者様の平均生存期間は3〜4ヶ月と報告されています。しかし、抗癌剤使用により生存期間の延長が得られ、患者様およびその御家族に多大な恩恵がもたらされています。 進行・再発胃癌に対する化学療法は、5FU系抗癌剤(TS-1,フルツロン、UFT、5FUなど)、タキサン類(パクリタキセル、ドセタキセル)、CPT-11などの抗癌剤の単剤投与(一種類の抗癌剤のみの投与)が一般的に行われます。しかし単剤での効果には限界があるため、多剤併用療法(複数の抗癌剤の投与)の試みが行われるようになっています。日本においても、次表に示すように様々なグループ・施設において臨床試験という形で多剤併用療法(TS-1+CDDP、TS-1+タキサン、TS-1+CPT-11、CDDP+ CPT-11など)が行われ、良好な治療成績を報告しております。 とは言え、抗癌剤にて癌を完全に消し去ることは出来ませんし、いつかは抗癌剤の治療効果は無くなります。そのため、上述の抗癌剤を全て使いながら、癌の進行を抑え込むことが大切である、との報告が多々見られます。 そこで、当院においては、次表の如く複数の抗癌剤レジメン(抗癌剤投与方法)を用意し、胃癌の制御状況を詳細に診断しつつ、順次これらの化学療法レジメンを施行しております。加えて、これらの抗癌剤レジメンの多くは、入院ではなく、外来化学療法室で治療を行えるものを中心にしており、患者様の生活の質(QOL) 向上にも配慮をしております。 (a) 進行・再発胃癌に対する化学療法レジメン (表1)臨床第II相試験成績(単剤)
(表2)臨床第I/II相試験成績(併用療法)
抗癌剤は、表1のような単剤投与が施行されるのが一般的です。しかし、TS-1を除き単剤投与では抗腫瘍効果に限界が見られます。そこで、表2に示すような併用化学療法レジメンが検討されています。これらのレジメンが検討された臨床試験成績を見ると、単剤投与に比べ、抗腫瘍効果および生存期間は改善されているのがわかります。当院においても、上記表2に示すような併用化学療法レジメンを施行しております。 (b) TS-1+ドセタキセル併用療法有効例 ![]() (c) 化学療法の有害事象
2-4) 緩和医療 過度に胃癌が進行している場合には、手術あるいは抗癌剤による治療が患者様の状態をかえって悪化させたり、残された時間の生活の質(QOL)を著しく損なったりすることもあります。 このような場合であると判断された際には緩和医療を中心とした治療や、緩和医療のみを選択することもできます。 緩和医療は苦痛の緩和を目的としたケアです。積極的に胃癌によって起こる痛みや吐き気、だるさなどの症状を和らげたり、精神的にケアをしたりします。 2-5) 当科における胃癌治療成績 1996年〜2005年の期間、済生会広島病院外科において手術が施行された胃癌症例の治療成績をお示しします。データ解析の内容は下記の5点です。(a)胃癌進行度と症例数 (b)胃癌発見の契機と胃癌進行度 (c)胃癌の進行度と根治度 (d)胃癌根治度別生存率 (e)胃癌進行度別生存率 (a) 胃癌進行度と症例数
(b) 胃癌発見の契機と胃癌進行度
(c) 胃癌の進行度と根治度
(d) 胃癌根治度別生存率
(e) 胃癌進行度別生存率
最後に 胃癌に関するご相談は、常時お受けいたしております。ささいな事でも、外科スタッフにお気軽にご相談してください。 連絡先 〒731−4311 広島県安芸郡坂町北新地 2-3-10 広島県済生会広島病院・外科 TEL: 082−884−2566 (内線2112) FAX: 082−820−1746 E-mail:saiseikaigeka@yahoo.co.jp |
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