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切除不能進行・再発胃癌に対する化学療法は、近年急速に進展しています。 この項では、最近のトピックスをわかりやすく報告しつつ、当院での取り組みを記載したいと思います。 1) 背景 2) 標準的化学療法は? 海外では・・・ 3) 標準的化学療法は? 胃癌大国日本では・・・ 4) 実際に行われる化学療法は? 5) 当科で行われている化学療法は? 6) 当科で化学療法が行われた患者背景 7) 当科における化学療法ラインと症例数 8) 当科における治療成績 9) 治療ライン毎の忍容性について 10) 外来化学療法室風景 11) 当院での胃癌に対する化学療法の方向性 1)背景 ●化学療法とBest supportive Care(BSC) ![]() 切除不能進行・再発胃癌に対する化学療法施行は、生存期間の延長に寄与することが証明されています!! 化学療法は行った方が良いです!! (BSC:抗癌剤を用いない対症療法) 2)標準的化学療法は? 海外では・・・ ![]() アメリカ・韓国は5FU+シスプラチン(CDDP)(CF)療法が、ヨーロッパではエピルビシン+5FU+シスプラチン(ECF)療法が標準的治療です。奏効率は高いが、毒性が強いのが問題と考えられています・・・ 最近、5FUの代わりに経口抗癌剤であるカペシタビンを用いたり、シスプラチンの代わりにオキザリプラチンを用いたレジメンが検討されています。 しかし、治療効果は悪くないのですが、毒性の問題は十分改善されているとは言い難いのです・・・ 3)標準的化学療法は? 胃癌大国日本では・・・ ![]() ASCO2007(アメリカ臨床腫瘍学会)では、TS-1という経口抗癌剤の有用性を世界に提示できた!!筆者は、TS-1が良く工夫された日本が世界に誇るべき経口抗癌剤の一つだと思います!! さらにSPIRITSトライアルの結果は、TS-1+シスプラチン(CDDP)が今後標準的治療になるだろうことを示しています。毒性も許容範囲内で忍容性も十分であるこが示されています。世界標準になるべく現在FLAGS試験(FU+CDDP vs TS-1+CDDP)がグローバルに進行中です。乞う,ご期待! さらに上表には提示していませんが、第U相臨床試験(次項に記載)において良好な治療成績および忍容性が示されたTS-1+CPT-11(ヤクルト・トライアル)、TS-1+ドセタキセル(JACCRO)併用療法の第V相試験が進行中であり数年以内に結果が提示される予定です・・・楽しみである。 4)実際に行われる化学療法は? ●鍵となる抗癌剤は? 一つだけではない!! ![]() ●日本で行われた有望な第II相臨床試験は・・・こんなに沢山ある! ![]() 最近の報告は、鍵となる抗癌剤の併用療法が多く、奏効率(腫瘍縮小効果)の上昇および生存期間の延長が認められ、胃癌化学療法の進歩は目覚しい。 ●なぜ、こんなに沢山の抗癌剤が必要なの? ●標準的化学療法は一つでいいのでは? 実は,化学療法を行う上においては,一次治療のみならず、二次以降の治療の重要性が考えられています。大腸癌においては、この点が証明されています(下図)
胃癌においても二次以降の治療の重要性が示唆されています。例えば,前記したJCOG9205およびJCOG9912においては、同じ抗癌剤である5FUが投与された群があります。しかし、生存期間中央値は前者が7.1ヶ月であるのに対し、後者は10.8ヶ月と3.7ヶ月も延長が見られます。これは二次治療施行率が、前者では70%であるのに対し、後者は90%であったためであると考えられています。 一次治療だけでは限界があり、二次以降の治療を積極的に施行することが、生存期間の延長に繋がると考えられています。 5)当科で行われている化学療法は? 根治切除不能進行・再発胃癌症例に対し、2005年4月以降、抗癌剤投与レジメンを院内で統一し、化学療法を施行してきました。 採用したレジメンは第U相以上の試験にて良好な抗腫瘍効果ならびに忍容性が認められたものを用いました。加えて鍵となる抗癌剤がいずれかのレジメンに含まれるようにしました。 レジメンの作成に当たっては、当院薬剤部,看護サイド、および医事科(医療経済)と協力して行いました。 具体的に採用した抗癌剤投与レジメンを下表に提示します。 ![]() 抗癌剤投与プロトコールをオーダリングシステムに導入し、ヒューマンエラーを起こりにくくしつつ、院内での抗癌剤投与プロトコールを統一しました。 プロトコール図の例を下に提示します。 尚、これらの作成に当たっては、当院薬剤部の多大なる協力を得ました。感謝です。 ![]() 6)当科で化学療法が行われた患者背景
転移再発部位としては、胃癌に特徴的な腹膜転移症例が25例中8例、腹腔細胞診で癌細胞が認められた(CY1)症例が8例見られました。肝臓への転移が見られる症例も7例認められました。 ●参考図(胃癌の転移形式の図) ![]() 7)当科における化学療法ラインと症例数 ![]() 2005年4月から2007年9月までの期間、25症例に対し延べ63レジメンが施行されています。 当科においては良好な抗腫瘍効果および忍容性より、Yoshidaら(前表)の報告したTS-1+ドセタキセル療法を一次治療として主に用いました。 8)当科における治療成績 ●化学療法ライン毎の抗腫瘍効果 ![]() 奏効率=完全・部分奏効症例数/N ・・・・腫瘍に対しある程度以上の縮小効果が一定期間以上見られた人の割合・・・・ 病勢コントロール率=(完全・部分奏効症例数+不完全奏効・安定症例数)/N ・・・・腫瘍を一定期間以上の間大きくならないように維持できた人の割合・・・・ 一次治療にてTS-1+ドセタキセル施行例の奏効率は61%、病勢コントロール率は94%と極めて良好な治療成績が得られました。しかも、二次治療への移行率も89%と良好でした。 二次治療においては、十分な奏効率は得られなかったが、病勢コントロール率は52%と良好な治療成績が得られました。 ●良好な治療効果(抗腫瘍効果)が得られた症例を提示 ![]() 肝転移巣がCT画像上、完全に消失している。驚異的な治療効果である!! この後、根治手術が試みられました。 ![]() 胃癌で最も制御が困難な腹膜転移巣(癌性腹水および左水腎症合併)が軽快している!! ●一次治療開始後の生存曲線 (N=25)
●詳細な治療効果の検討
●腹膜転移症例と腹膜以外への転移症例の生存曲線 ![]() 腹膜転移が認められる症例(N=8)の生存期間中央値は8.5ヶ月、これに対し腹膜以外への転移症例(N=17)の生存期間中央値は18ヶ月。 腹膜転移を認める症例は予後が悪くなる傾向を認めます。原因として癌性イレウス(腸閉塞)あるいは水腎症の発症が、鍵となる抗癌剤(経口抗癌剤であるTS-1,CPT-11,シスプラチンCDDP)の使用を困難にしている点が上げられます。今後の課題の一つであると考えています。 ●施行された化学療法レジメン数と予後 ![]() 3レジメン以上が施行された症例(N=8)の生存期間中央値は25.1ヶ月(2年を超えています)、これに対し2レジメンまでしか施行されなかった症例(N=17)の生存期間中央値は11.2ヶ月。 3レジメンまで施行できるのは、患者さまの全身状態が良好であったり、化学療法に対する感受性があることを示す所見でもあります。しかし、鍵となる抗癌剤を使い切る方向での3レジメン以上の治療施行は、患者さまの予後を延長させることに寄与しているとも考えられます。 9)治療ライン毎の忍容性について ![]() 有害事象を血液毒性と非血液毒性に分けて検討しました。いずれの化学療法ラインにおいても重篤な有害事象は低頻度でした。忍容性は良好でした。 しかも、二次化学療法までは、外来での治療率が70〜80%程度認められ、良好な生活の質を維持できていることが推測されます。 10)外来化学療法室風景
11)当院での胃癌に対する化学療法の方向性 ・第V相臨床試験で新たなエビデンスがどんどん作られています。ポジティブな成績であれば、当院で施行可能なプロトコールは積極的に導入してゆく予定です。 ・積極的に臨床試験に参加し、新たなエビデンス作りに協力し、日本・広島の医療進歩に貢献します。 胃癌に対する化学療法は、ここ数年の内に劇的に進展すると考えられています。これらの情報を今後、このホームページでいち早く、どんどん提供してゆく予定です。 ご不明な点、ご質問等ございましたら下記メールアドレスにアクセス下さい。 連絡先 〒731−4311 広島県安芸郡坂町北新地 2-3-10 広島県済生会広島病院・外科 TEL: 082−884−2566 (内線2112) FAX: 082−820−1746 E-mail:saiseikaigeka@yahoo.co.jp |
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