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医学倫理指針

1.目的

 本指針は、済生会広島病院(以下「当院」という。)の職員が行う研究若しくは医療行為等、医学の倫理に関するヘルシンキ宣言(2013年WMAフォルタレザ修正)、リスボン宣言(2015年オスロ修正)等の趣旨を尊重した、研究・医療の現場で遵守すべき事項を定めることを目的とする。

2.基本原則

 当院における研究若しくは医療行為等は、基本的に本指針を遵守しなければならないが、実施する研究が、臨床研究、疫学研究及びヒトゲノム・遺伝子解析を含む研究のうち、いずれかの研究に該当する場合は、それぞれの研究における倫理指針である「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(令和3年3月23日施行、令和4年3月10日一部改正、文部科学省、厚生労働省、経済産業省)を遵守しなければならない。

 上記の倫理指針で適用範囲外とされる、以下の研究に関しては、本指針の対象としない。

  • (1) 法律の規定に基づき実施される調査
  • (2) 資料として連結不可能匿名化されている情報のみを用いる疫学研究
  • (3) 法令等に基づく保健事業
    但し、保健事業(脳卒中情報システムやいわゆるがん登録事業を含む)により得られた健診データ又は生体資料を用いて、特定の疾病の予防法、疾病の地域特性等を調査する研究は、本指針を適用する。

3.インフォームド・コンセント

 研究若しくは医療行為等を実施するにあたっては、対象者に対して研究若しくは医療行為等の意義、目的、方法、予想される結果、対象者の負担等を十分に説明した上で、対象者本人の自由意思に基づく研究参加の同意を得ること(以下、「インフォームド・コンセントを得る」という)を原則とする。この場合の対象者への説明や、対象者の同意の意思表示の方法は、対象者に与える可能性がある危険や負担と比較して均衡を失したものであってはならない。
 研究若しくは医療行為等を行う場合のインフォームド・コンセントを得る手順は、次のとおりとする。

(1) 曝露に関して対象者に介入を行う研究(以下、「介入研究」という)

 研究者が対象者個人に対して曝露状態を指定する介入研究では、文書によるインフォームド・コンセントを得ることを原則とする。ただし、集団単位で割付を行う介入研究では研究実施についての情報公開を行い、かつ、研究対象となることを拒否できるものとすれば、対象者個人のインフォームド・コンセントまでは必要としない。

(2) 介入研究以外の研究(以下、「観察研究」という)

 インフォームド・コンセントを得ることを原則とする。侵襲性を有するデータ収集や、臓器保存など、将来にわたり情報量が増加する可能性があるデータを曝露情報として含む研究では、文書によるインフォームド・コンセントを原則とする。これ以外の人体から採取された試料を用いる観察研究では文書によるインフォームド・コンセントは必要ないが、説明の内容および同意に関する記録が研究者によって作成されなければならない。人体から採取された試料を用いない観察研究では研究実施についての情報公開を行い、かつ、研究対象となることを拒否できるものとすれば、対象者個人のインフォームド・コンセントまでは必要としない。

(3) 既存データのみを用いる研究

 既存データのみを用いる研究では、データを収集した段階で得たインフォームド・コンセントの範囲を超える利用について、可能な限りインフォームド・コンセントを再度得る努力を行う。しかしこれが事実上不可能な場合には、研究実施についての情報公開を行えば、研究対象者からのインフォームド・コンセントは必ずしも必要とはしない。

(4) 研究開始以前に人体から採取された試料を用いる研究

 研究開始以前に人体から採取された試料を用いる研究では、試料採取時または研究開始時に対象者からインフォームド・コンセントを得ることを原則とする。ただし、インフォームド・コンセントを得ることができない場合または極めて困難な場合には、次のどちらかによるものとする。

  • ① 試料から氏名、住所など対象者を同定できる情報(以下、「個人同定情報」という)を除去して使用する。
  • ② 次の全てを実施する。
    • a. 研究の実施についての情報公開を行う。
    • b. 対象者となることを拒否できることを保証する。

(5) 対象者本人のインフォームド・コンセントを得ることができない研究または極めて困難な研究

 対象者本人のインフォームド・コンセントを必要とする研究で、インフォームド・コンセントを得ることが研究の性質上不可能または極めて困難な場合、あるいは法的に有効な意思表示が出来ない場合には、次の手順で研究を行う。

  • ① 対象者が成人で、説明の内容を理解できない、または意思表示ができない場合は対象者の法定代理人など、代諾者のインフォームド・コンセントで代用する。
  • ② 対象者が未成年である場合
    • 対象者が15歳以上の場合には、本人のインフォームド・コンセントと共に、親権者のインフォームド・コンセントを得ることを原則とする。対象者が14歳以下の場合には、親権者のインフォームド・コンセントをもって本人のインフォームド・コンセントとみなすが、対象者本人にも理解力に応じた説明を行い、承諾を得る努力を行わなければならない。
      この場合の本人への説明と承諾は、インフォームド・コンセントを得る場合に求められている方法に従う必要はない。
  • ③ 既に対象者が死亡している場合
    • 生前における明示的な意思に反していない場合には、インフォームド・コンセントを得たものとする。

(6) 他の機関からデータや試料の提供を受けて行う研究

 他の機関からデータや試料の提供を受けて研究を行う場合には、対象者の同意を得ることを原則とする。対象者の同意を得ることができない場合には、次のいずれかの方法で提供を行う。

  • ① データや試料から個人同定情報を外して匿名化する。
  • ② 次の項目を満たす。
    • a 当該研究の実施について情報公開を行う。
    • b 対象者に研究協力拒否の機会を保証する。

(7) 上記の原則でインフォームド・コンセントを得ることができない研究

 研究の性質に鑑み、上記の(1)から(6)の方法でインフォームド・コンセントを得ることができない社会的に重要な研究の場合には、次の要件を全て満たす場合に限り、原則と異なるインフォームド・コンセントを得る方法(軽減・免除を含む)を採用することができる。

  • ① 研究対象者に対して、通常の日常生活や、通常の診療上の生理学的・心理学的検査によるものを越えると予想される危害や不快感を与えないこと。
  • ② その研究を行うことが対象者の不利益とならないこと。
  • ③ その研究によらなければ、事実上、研究の目的を達成できないこと。
  • ④ 可能な場合には、次のいずれかの措置が講じられること。
    • a 研究対象者が含まれる集団に対して、データの収集・利用の内容を、方法も含めて広報すること。
    • b できるだけ早い時期に、対象者に事後的説明(集団に対するものも可)を行うこと。
    • c データ収集や利用が長期間にわたって継続的に行われる場合には、その実状を、データ収集や利用の方法も含めて広報し、社会へ周知するように努めること。

4.対象者の参加拒否の意思表示があった場合の取扱い

 インフォームド・コンセントを得た後、あるいは研究についての情報公開を行った後に、参加者(候補者を含む)から拒否の意思表示があった場合には、既に収集された当該対象者のデータや資料を破棄することを原則とする。ただし、既に集団としての解析結果が出ているものについては、結果を破棄する必要はない。
 拒否を認めることにより研究が成立しなかったり科学的妥当性が損なわれることにより、著しく社会に不利益を及ぼす場合には、引き続き当該対象者のデータや試料を利用することができる。この場合には拒否を認めることができない理由について、当該対象者および社会に対して説明を尽くすものとする。

5.プライバシーの保護

 医学論文若しくは学会・研究会において発表される症例報告では、プライバシーに配慮し、患者が特定されないよう次の事項について留意しなければならない。

  • (1) 患者個人の特定可能な氏名、ID番号、イニシャルは記載しない。
  • (2) 患者の住所は記載しない。但し、疾患の発生場所が病態等に関与する場合は区域まで限定して記載することを可とする。(広島県、広島市など)
  • (3) 日付は、臨床経過を知るうえで必要となることが多いので、個人が特定できないと判断される場合は年月までを記載してよい。
  • (4) 他の情報と診療科名を照合することにより患者が特定され得る場合、診療科名は記載しない。
  • (5) 既に他院などで診断・治療を受けている場合、その施設名並びに所在地を記載しない。但し、救急医療などで搬送元の記載が不可欠な場合はこの限りでない。
  • (6) 顔写真を提示する際には眼を隠す。目疾患の場合は、顔全体が分からないよう眼球のみの拡大写真とする。
  • (7) 症例を特定できる生検、剖検、画像情報に含まれる番号などは削除する。
  • (8) 以上の配慮をしても個人が特定化される可能性がある場合は、発表に関する同意を患者自身(または遺族か代理人、小児では保護者)から得るか、倫理委員会の承認を得る。

6.守秘義務

 対象者から収集した個人に関するデータを守秘すること、試料の保管については、不当に入手、修正、削除、利用されないことや盗難、紛失が起こらないように管理する義務を負う。

7.研究結果の公表

 研究結果は可能な限り、適切な方法で公表されなければならない。この場合、本人のインフォームド・コンセント(文書に限る)がある場合を除いて、対象者個人を特定できる形式での公表は、認められない。

8.個々の研究が本指針に適合するか否かの判断

 個々の研究が本指針に適合するか否かの判断は、済生会広島病院倫理委員会(以下、「倫理委員会」という)で審査する。
 4(6)bにより他の機関からデータや資料の提供を受けて行う研究においては、それぞれの提供機関において倫理審査委員会等の承認を得る必要があるが、これを行うことができない場合には提供機関の依頼により他の倫理審査委員会等の承認でもよい。本指針は国の指針が改訂された場合、及び必要に応じて見直すものとする。

附 則

本指針は、平成17年2月14日から施行する。

附 則

本指針は、令和5年9月1日から改正施行する。

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